肌の老化は、身体の他の部分よりも先に現れます。 老化とともに肌細胞の大きさと数に影響が現れ、明らかな変化をもたらしますます。防衛組織、温度調節器官としての機能は徐々に低下し、汗、皮脂、ビタミンD等の生成機能も低下します。時の経過とともにコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸は減少し、肌はどんどん薄くなってゆきます。肌のターンオーバー頻度も低くなり、外傷等の治りも遅くなります。
「紫外線や食習慣、喫煙などは肌へのダメージとなるものの代表格。これらは全て、健康的な生活習慣の構築によって管理、改善することができます。」Dr. Robert Jens Schemmer FRCP(c)
老化は生物学的、環境的、遺伝子的要因からもたらされる複合的現象。また、文化的、社会的要因も影響を及ぼすため、非常に多角的な現象であるとも言えます。しかし皮膚科学の観点から見れば、老化はあらゆる内的、外的要因によってもたらされる、至って生物学的事実であると言えるでしょう。他の器官と同様、私たちの肌も、ストレスや分子損傷、酸化損傷の蓄積、またその他の環境的要因の蓄積による機能低下は不可避です。これにより、シワの増加やハリの低下、血管障害、色素異常症などが引き起こされます。
肌の老化とともに肌細胞は小さくなり、その数も減少します。肌のバリア機能や温度調節機能も低下します。 老化とともに肌は徐々に薄くなってゆき、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸の消耗を引き起こします。これらの変化は肌の乾燥やシワの発生につながります。美容面以外でも、老化は肌の免疫機能にも影響を及ぼし、皮膚癌のリスク増加ももたらします。では、どのような対策を取れば良いのでしょうか。
老化は私たちの身体における自然現象であり、老化から逃げることはできません。 最も重要なことは、良いスキンケアルーティン、健康的な食習慣と生活習慣(禁煙と程良い量の飲酒)、そして紫外線から肌を守るなど、日々の生活の中で肌のケアを怠らないこと。若返りに過度に期待するのではなく、きちんとしたケアで肌にツヤをもたらし、丁寧な保湿できめ細かい肌を維持しましょう。肌の美しさに年齢は関係ありません。
肌の老化をもたらす要因
紫外線と老化: 紫外線によるダメージのおよそ50%は肌細胞に悪影響を及ぼすフリーラジカルの生成によるものです。紫外線は、酵素の一種であるマトリックスメタロプロテアーゼの発現を促します。マトリックスメタロプロテアーゼはコラーゲンを破壊し、肌の保護組織にダメージを与え、結果として肌のたるみやシワの発生を引き起こします。また、新たなコラーゲンの生成も阻害し、たるみやシワ、薄くてハリの無い肌へと導きます。
糖類と老化:糖類が肌の早老や糖化反応による炎症を引き起こすという研究エビデンスが増えてきています。過剰な糖分の蓄積はコラーゲンやエラスチンに対する直接的なダメージとなり、私たちの肌を構成しサポートする物質の減少へとつながります。結果として肌のハリの消失、肌質の変化、シワの発生、乾燥、ニキビ、たるみの発生を引き起こします。
喫煙と老化:喫煙は長らく肌の早老やシワの発生、治癒能力の低下、皮膚病リスクの増加などと紐付けられてきました。喫煙とシワの関係性についてはかなり昔から知られており、特に女性がこの影響を受けやすいという研究結果もあります。喫煙は目や口周りの小ジワとの関係性が指摘されています。若年飲酒に加え、喫煙も顔周辺の肌に多くの影響を及ぼします。具体的には肌の菲薄化や発赤、輪郭の骨の目立ちなどがこれに当たります。喫煙行為はコラーゲンとエラスチンを破壊する酵素物質を破壊するとされており、結果として肌のハリやたるみ、発赤、シワなどに影響を及ぼします。
人種によって肌の老化に違いが見られるのは何故なのでしょうか。メラニンは私たちに肌色を与えてくれる存在であり、濃いめの色の肌には薄めの色の肌と比べて2倍の濃度のメラニンが存在しています。メラニンが増加することで、紫外線によって引き起こされる様々な悪影響から体を守ることができる一方、濃い肌は色素沈着や瘢痕化に対する脆弱性を持ち合わせています。肌の厚さも肌色によって違いが見られます。濃い肌は厚く、コンパクトな真皮を持っているためシワが発生しにくいです。さらに、濃い肌の各層には密度の濃い細胞基質と多めの脂質が備わっているため、肌のしなやかさと潤いを保つことにつながっています。
すべての色の肌にとって、老化のプロセスはフォトダメージや脂質の増減の蓄積であり、また結合組織内の変化でもあります。また、老化のプロセスは世のあらゆる社会において大きな関心を集め続けており、自尊心の低下や不安感、化粧に対する強迫観念などの問題がよく話題に挙がります。ですが、人種や肌の色、年齢、性別に関わらず、美しい肌が健康的な肌の象徴であることには違いありません。