メラニンは、私たちの肌に色を付けてくれる物質です。しかし、これは肌全体に均等に分布しているわけではありません。例えば、斑点状に集合することもあり、それはシミや色素沈着などの黒ずみとして現れます。メラニンの量や働きは、日焼けや怪我、病気、薬、ホルモンバランス、そして加齢によって変化します。つまり、肌の色素沈着は様々な原因によって引き起こされるのです。
ここでは、一般的な色素沈着の種類について詳しく見ていきましょう。
母斑
母斑とは、名前の通り、生まれたときからある色素沈着です。色素細胞の集合や血管の奇形が原因で引き起こされると言われており、皮膚の他の部位と色調や組織が異なります。治療せずに自然と消えることもあれば、そのまま残ることもありますし、時間とともに変化することもあるでしょう。
母斑には、いくつかの種類があります。
蒙古斑:赤みや青みを帯びたアザで、赤ちゃんの背中やお尻にできることが多いです。蒙古斑は通常4歳までに消えるため、治療の必要はありません。
カフェオレ斑:茶色もしくは濃褐色のカフェオレのような斑点です。境界は真っ直ぐである場合と、そうでない場合があります。一般人の約10%がカフェオレ斑を1〜2個持っていると言われています。このタイプの色素沈着は、美容目的でレーザー治療されることもあります。
ホクロ:ホクロには、明るい色から濃褐色までさまざまな種類があります。平らなものもあれば、隆起しているものも見られます。ほとんどのほくろは良性で何の問題も引き起こしませんが、一部は「メラノーマ」と呼ばれるがん化する腫瘍に変化する可能性があります。そのため、ほくろができたら、出血や痛み、かゆみの有無、色、形、対称性、境界線、大きさの変化などに注意する必要があります。
多くの皮膚科では、ほくろの良悪性をチェックする際に、一般的な経験則に基いて作られた「ABCDEガイドライン」を利用しています。
ほくろチェックのABCDEガイドライン
- A-Asymmetry(非対称):ほくろを半分に割ったとき、断面が同じように見えるか。
- B- Border(境界線):ほくろの境界線は均一か。
- C-Colour(色):ほくろは単色か。赤や青など、さまざまな色が混在していないか。
- D-Diameter(直径):直径0.6cm以下であるか。直径0.6cmを超える場合は、検査の受診が推奨される。
- E-Evolving/Elevation(進化/高さ):平らだったほくろが隆起してきていないか。盛り上がりがある場合や、出血、かさぶた、痛み、かゆみなどがある場合は、検査が必要。
上記の特徴に当てはまったり、変化に気づいたりした場合、または家族にメラノーマの病歴がある人がいる場合は、皮膚科医でホクロの検査を受けた方が良いでしょう。
血管性母斑
血管性母斑とは、母斑の中でも血管が原因として引き起こされるものです。いくつかの具体例について見てみましょう。
黄斑状出血 :黄斑状出血は、血管性母斑の中で最も一般的なタイプです。体のどこにでも現れる軽い赤色の痕で、隆起はしていません。額やまぶたにできて、通常2歳を過ぎると消える「エンジェル・キス」と、首の後ろにできて成人期まで続く「コウノトリの刺し傷」の2種類があります。軽度のものが多く無害なため、治療の必要はありません。
血管腫:血管腫は、たくさんの小さな血管が集まってできたもので、女性や未熟児に多く見られます。血管腫は通常、顔、体幹、腕、脚に小さな跡が残る程度です。しかし、中には生後1年以内に急速に大きくなるケースもあります。
ポートワイン母斑:ポートワイン母斑は、顔、体幹、腕、脚に、ピンク、赤、紫のアザで、一生残るものです。毛細血管の異常な発達によって起こり、時間の経過とともに隆起して濃くなることもあります。
アルビニズム
アルビニズムは遺伝性の疾患のひとつです。メラニンの生成を抑制する遺伝子を持ち、皮膚、髪、瞳に色素がない状態のことです。根治的治療法は見つかっていません。このタイプの人は、日焼けによるダメージを受けやすく、深刻な場合では皮膚癌になる可能性も高いため、常に日焼け止めを使用する必要があります。アルビニズムは、どの民族の肌タイプにも起こり得ますが、色白の人に最も多く見られます。
肝斑(かんぱん)
肝斑は、ホルモンの変化により皮膚が黒くなることです。妊娠中や出産後によく見られるほか、ピルやホルモン療法による副作用として発症することもあります。頬、額、鼻筋、顎、上唇などに生じる灰褐色の斑点が特徴です。日光に当たると悪化することが多いため、普段から日焼け止めを使用するなど、普段から注意する必要があります。
酒さ
酒さは、原因不明の赤みが斑状に発生する病気です。数週間から数カ月で症状が消えるケースが多く、にきびや炎症と誤診されることもしばしばあります。頬、顎、鼻、額などによく見られ、日光、極端な温度差、特定の食べ物やアルコール、皮膚への血流の増加などによって悪化することがあります。酒さは単なる赤ら顔にも似ていますが、進行すると血管が浮き出て、鼻、あご、油腺が肥大化するのが特徴です。
光老化
「シミ」「肝斑」「日光黒子」とも呼ばれる光老化は、日光を長年浴び続けることが原因で引き起こされます。長年の日光浴が原因で起こることが多く、30代後半から40代前半にかけて急に増えることも珍しくありません。
炎症後色素沈着 (PIH)
PIHは、ニキビが治った後に皮膚に残る黒い斑点などの色素沈着です。そのほか、肌への外傷が原因で起こる場合もあります。ひっかき傷や虫刺されなどの小さな傷に色素細胞が反応することで増えるケースもあります。
白斑
白斑は、体の免疫システムが色素細胞を攻撃することで、色素が減少してしまう病気です。通常、口や目の周り、手の甲などに、滑らかな白い斑点が生じます。人によっては、白い斑点が全身に現れることもあります。現在、白斑の色素を均一にする方法は確立されていませんが、外用薬、光、レーザーなどで色素を均一にできることがわかっています。
まとめ
ここまで、さまざまな種類の色素沈着について紹介してきました。皮膚の色素沈着は、病気や疾患ではなく、メラニンが不規則に沈着することで起きる特徴です。
色素沈着の要因は、遺伝的なものもあれば、外因的なものもあります。皮膚科医は、色素沈着には70種類以上もあることを明らかにしています。
紫外線のほか、ビタミンDの欠乏、特定の薬物、化学物質、妊娠やホルモン療法によるホルモンバランスの変化は、色素沈着を悪化させる要因になることを覚えておきましょう。